北斗七星

北斗七星 2003年6月23日 Vol.995

2003/06/23 15:38

週刊BCN 2003年06月23日vol.995掲載

▼「学校」、「郵便局」、「駅」。明治維新以降、近代国家を目指した日本にとって、この3つは欠かせないものだった。農村や漁村など地方のコミュニティの中心として、地方と中央をつなぐ接点として、重要な役割を果たした。そこまで大げさに言わなくても、ほとんどの日本人にとって、自己の原風景を語る際にはキーワードになる。

▼国鉄が分割民営化された時、それにともなって地方の赤字路線の廃止が相次いだ。これに地元住民はこぞって反対。バスによる代替路線の設置にも納得しなかった。鉄道と駅。地方に住む人にとって、それは単なる交通手段以上の意味をもっていた。地方の小さな駅では、駅員さんはその地域の有名人でもある。土地を出ていく人を見送り、コミュニティの移り変わりを語る証人でもあった。

▼JR西日本は、駅員として契約社員の採用を開始した。もちろん、目的は人件費の抑制だ。時給は1000円程度。契約は1年契約。今年度は200人の採用を予定しており、すでに鳥取県の米子支社では採用を始めたという。現下の厳しい経済情勢のもと、企業にとってコスト削減は至上命題。JR西日本にとっても、契約社員の採用は焦眉の急だったのだろう。

▼夏目漱石の小説「三四郎」の主人公は、青雲の志を抱いて夜行列車で上京した。石川啄木はそ﨟を聞きに上野駅へ足を運んだ。駅にはコスト意識に代表される経済合理主義とは相入れないノスタルジーがあった。しかし、それも昔の話になってしまった。
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