旅の蜃気楼

真剣さが生む感動

2003/06/02 15:38

週刊BCN 2003年06月02日vol.992掲載

▼満員電車でスポーツ新聞を読む人が増えているように感じる。読者の皆さんの周辺はいかがですか。今朝も、「決めた―――!」の大見出しが目の前でヒラヒラしていた。梅雨の季節は気分が下がり気味だ。そんな時には、阪神タイガースの公式サイトに行ってみてはいかがですか。見ると、もりもり、元気が出てきます。ムカムカするのも元気のうち。球団をもたない新聞社サイトの「Mainichi Interactive」のE-mailディベートに行ってみた。東京・国分寺市に住む27歳の会社員の方が「今のままの讀賣でいい。おもしろい劇団だ」と意見を述べている。

▼野球チームのことを「球団」ではなくて、「劇団」というところに興味が湧いた。そうか。スポーツはライブの劇なんだ。出たとこ勝負の劇に感動するんだ。そういえば、今場所の大相撲はわくわくした。朝青龍の「このやろう!」の一瞥に、生身の闘争本能を感じた。品格の議論はさておいて、星野仙一監督の大乱闘からすれば、かわいいもんだ。劇はドラマだ。真剣な劇から感動は生まれる。人はそのドラマに感動を覚える。それが真剣であればあるほど、ドラマの感動は大きい。「決めた――!」の大見出しは、その活字の大きさで真剣味を表現しているわけだ。

▼劇を演出するには最高のステージが欠かせない。甲子園球場の名は高校野球の、「今年もあつい甲子園がやってきました」の言葉で、日本人の心に焼きついている。一方の巨人はBCN編集部に近い東京ドームだ。東京ドームホテルの4階、「たん熊」のカウンターで、ラクーアシティに変身した夜のイルミネーションを楽しみながら、たらの芽のてんぷらを味わう。ブルーに輝く観覧車が、ゆっくり回る速さを楽しみ、異次元の世界に心の疲れを癒す。東京ドームは5月1日に生まれ変った。確かに読売は演出の上手な劇団である。(本郷発・笠間 直)
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