Letters from the World
SARS対策はQC活動と同じか
2003/05/26 19:47
週刊BCN 2003年05月26日vol.991掲載
SARSの台湾における状況が大きく変化してきた。前回報告した4月14日の時点では、中国の感染者数の増加率が激しかったが、台湾への飛び火はそれほど心配していなかった。ところが、今や、増加率という点では台湾がトップに。また、規模レベルでも中国、香港に次ぎ、世界3位にランクされるようになってしまった。最近の2週間での変化は大きいものがある。中国ではSARSに限らず、報道は事実上管理下にある。
広東では当初、香港発の報道を規制していたが、現地のテレビには香港の放送が入ってくる。そのアンバランスな報道を聞いていると、香港のSARSが自分たちの土地から伝わったことさえ知らずに、香港からの襲来におびえる。この情報欠如、常識欠如が、SARSの蔓延を許すひとつの原因ともなった。しかしその後、中国の権力はSARSに対策を講じ始めた。強引ともいえる集団隔離など、非人道的措置で強制防御を試みた。そのせいかどうか、SARS感染スピードは減速に転じている。
一方、自由を謳歌する台湾では、国家権力による規制など、屁とも思わない。汚染地域からの帰国は10日間(現在は2週間)の自主隔離を強制されるが、まったく気にしない人々が多い。集団隔離対象の住宅地域から脱走する人たちも後を絶たない。ニュースなどで指名手配をする始末である。そうこうする間に、16日現在で台湾の感染者総数は274人に増えてしまった。人口比率で言うと中国の3倍の感染者がいることになる。
今回の騒動をみて、思い起こすことがある。パソコン工場の生産ラインでの品質改善運動だ。全社レベルでの意識改革の必要性、そして作業員自らの意思で不良品を閉め出そうとする努力がない限り、不良品はなかなか撃退できないものだということを。SARS撃退と物づくりに於ける品質追求は、かなり共通するものがあるかもしれない。(台北発:アコードインターナショナル 原 真)
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