旅の蜃気楼

ソロスの本は赤い

2003/03/03 15:38

週刊BCN 2003年03月03日vol.980掲載

▼読書はお好きですか。本文を読まなくても、装丁を見るだけでも面白いですよ。ジョージ・ソロス著、『グローバル・オープン・ソサエティー』。ダイヤモンド社が最近出版した本だ。まず驚いたのは、装丁が真っ赤なのだ。目立つことはなはだしい。しかしこれに似た装丁は記憶がある。書棚からソロスの本を引っ張り出した。3冊あった。それが写真にあるものだ。左から、『グローバル資本主義の危機』、日本経済社刊。97年のアジア危機の翌年の刊行だ。インターネット上を駆け巡る、金と情報と思惑が綾なすグローバルの入門書だ。ソロスは革命家の姿だ。これが真っ赤。

▼チェ・ゲバラを思わせる危ないやつ。これがソロスの印象だ。『ソロスの資本主義改革論』、日本経済社刊。この本は2000年にアメリカで出版、邦訳は世界史的な節目のNY911頃に発刊。人も社会も変化する。ソロスに変化が生じている。グローバル・オープンソサエティを提唱し、開かれた世界規模の社会を形成しようと呼びかけている。そのための国際法も、制度もつくろうという改革論を展開している。なんと明日のインターネットの世界を予言しているではないか。この間、世界はネットバブル崩壊、経済不況、自殺の急増、NY911、社会の先行き不安、閉塞感、株価暴落、個人資産減少、デフレ、利己主義経営の蔓延、自爆テロ、会社大型倒産、戦争不安、そして、3月3日のひな祭りとなる。

▼2冊目で改革者に変化したソロスは、近刊の3冊目の本で、経済哲学者に変身した。社会生活を支える物理的なインフラが進化した。ネットワークの同心円上で、個人が自由に世界の人と情報交換し、価値を交換できる時代が来た。価値とは金と権力だ。国家というか、家長というか、親父というか。そんな力が及ばない社会基盤ができいているんだ。ああ、世界は変わる。ソロスの本は赤い。なぜだろ?(本郷発・笠間 直)
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