Letters from the World

台湾と中国の三通

2003/02/03 15:37

週刊BCN 2003年02月03日vol.976掲載

 台湾の航空会社が1月26日、中国の上海に降り立ち、同日約200人の台湾ビジネスマンとその家族らを乗せ、台北に向かった。これは、国民党政府が中国共産党との内戦に敗れ台湾に渡って以来、初めて起きた歴史的イベントである。台湾政府は中国に対する三通(通商、通航、通信)の3つの解放に対して、これまでかたくなに拒んできた。

 実際、通航が現実には一番むずかしかったが、今回、期間限定付きとはいえ、ついに、開始に至ったわけだ。通航以外の通信と通商の現状はどうなっているであろうか。海底ケーブルがどこを経由しようが、間接も直接も利用者にとって、差を感じない。実際、台湾海峡を第三国所有の光ケーブルが堂々と両岸に直接つながっている。投資や決済資金などのカネの流れは、為替という「電子」の流れでもある。第三国経由は多少不便であったが、逆に、とんだ恩恵を台湾ビジネスマンに与えてしまったのも事実である。

 第三国といっても、香港、英領バージン諸島、ケイマン諸島などのタックスヘブン国のこと。ここの無人のペーパーカンパニーを利用し投資や決済をする。コストが安く、短期間で仕組みが構成できるからだ。以前は欧米の多国籍企業が多少やましい気持ちをもちながら、節税目的や保険料の節約のために利用した古典的なスキームである。だが、台湾の場合、このようなやましさは全くない。台湾政府も、これらを黙認しているわけだ。

 結果として、台湾が現在の先進国のなかで、もっともタックスヘブンの公の利用が進んだ国となってしまった。台湾政府の税収入の減少は大変な額に昇るであろうと想像される。また、台湾から中国へ投資された資金は、利潤を生んでもそうそう、本国へ戻るわけがない。理由は台湾の企業家たちが、それらタックスヘブンの有効利用の達人になってしまったからだ。(台北発)
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