旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->21.ヨーロッパの旅 II-(3)ヴェネツィア

2003/01/27 15:27

週刊BCN 2003年01月27日vol.975掲載

 フィレンツェからバスでアペニン山脈とポー川を越えてヴェネツィアに入った。水の都ヴェネツィアは本島を中心に100以上の島々からなっていて、船と徒歩だけが交通手段で車は通れない。本島には150もの運河が巡っていて、400を超す橋で街が結ばれている。こんな不便なところに、中世地中海を支配した強国ヴェネツィア共和国が栄華を誇ったことが不思議でならない。しかし航空機も自動車もなかった時代の船の重要性を考えた時、水利に長じていて攻守に適した海運国ヴェネツィアの繁栄も当然と良く理解することができた。サン・マルコ広場を中心に、由緒あるサン・マルコ寺院やドゥカーレ宮殿、その他教会や博物館が立ち並び、大運河の両側には意匠を凝らした資産家の館が並んでいる。水に囲まれたこの都市独特の美しく珍しい景観は、そのまま絵になっている。ゴンドラに乗って運河巡りをし、街でショッピングを楽しんだ。ガラス工房を訪ね、かねてより希望の美しいヴェネツィアン・レッドの花瓶を買った。

 ここは中世十字軍の東征で栄え、ジェノヴァやトルコと地中海の覇権を争った。その長い歴史の重みに耐えて、戦争の傷跡もなく、かつての栄華の姿を今に伝えてくれる。強国の面影は全くなく、今は世界的な観光地として、観光客が集まり賑っている。それにしても地中海は外洋ほどには干満の差がないのか、市街の建物が直接アドリア海の海水に接しているのが信じられない想いである。聞けば地盤沈下もあって、時々高潮に襲われ、サン・マルコ広場が1メートルも冠水することがあるという。それにしても日本では考えられない話である。

 中世共和国の全盛期には多くの交易船で埋まった港や大運河。そしてレパントの海戦で強豪トルコを破り、勝利に沸く市民の熱狂ぶりなど次々と空想が広がってゆく。
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