旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->16.ローマ(2)

2002/10/28 15:27

週刊BCN 2002年10月28日vol.963掲載

 午後コロッセオに向う。ここは紀元80年に完成した円形闘技場で、5-8万人を収容できる4階建てで、現在でもローマ最大の建造物である。古代ローマ人の高い建築技術と強大なエネルギーに驚嘆する。ここでは生命をかけた剣闘士の戦いや、人間と猛獣の死闘など残酷で凄惨な格闘が行われ、それを見て何万人もの市民が熱狂したという。古代ローマ人の嗜虐趣味には驚きを通り越して言葉がない。

 近くにコンスタンティヌス凱旋門がある。ローマオリンピックのマラソンで無名のアベベが裸足でゴールインした、その凱旋門である。それに続くフォロ・ロマーノは2000年前の古代ローマ市の中心部が発掘されたもので、元老院やその他多くの遺跡が残っている。これらの貴重な遺跡が無造作に街の一部として保存されているのに、驚いた。

 ロンドンやパリの美術館などでもそうだが、凡そ日本では考えられないことで、美術品や遺跡を守ろうという観光都市の市民としての意識の高さに感心した。

 エマニエル記念堂はイタリア独立を記念して1911年に建てられた。白亜の巨大建造物と、高く建つエマニエル2世の騎馬像は、市内の至るところから見えるように設計されている。有名なトレヴィの泉はバロック美術後期の傑作で観光客で賑っている。私も伝説に従って、後ろ向きにコインを泉に投げ込んだ。

 帰路は南回りをとったので、途中、カイロ、カラチ、カルカッタ、バンコック、香港に着陸し給油をしながら飛んだ。思ったよりも時間がかかり、その度に食事を運ばれるので、眠気と苦痛に悩まされながら帰った。

 全ての道はローマに通じると言われ、当時の世界を制覇した大ローマ帝国の権勢を彷彿とさせる遺跡の数々を見たことで、栄枯盛衰の感を深くした。駆け足で回った忙しい旅であったが、初めて見るヨーロッパは良きにつけ悪しきにつけ、得ることの多い旅であった。
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