旅の蜃気楼

五感の情報

2002/10/07 15:38

週刊BCN 2002年10月07日vol.960掲載

▼街にいると山が恋しい。山にいると街が恋しい。人間はわがままにできているんですね。蔵のある素敵な街・米沢には15日間、滞在した。毎日、教習車に乗り、教室では「交通の実体をともなっているような、いないような」、基本的な交通ルールを学習して、日が暮れた。努力のかいあって、無事、吾妻自動車学校を最短期間、同期生の最年長で卒業した。東京に戻って、その翌日の午前中に、東陽町にある江東運転免許試験場で、学科試験を受けて、無事合格。教室の電光掲示板に受験番号の「200」が掲示された時は、ほっとした。53才にして、成人になったような気分で、嬉しかった。午後には運転免許証を手にして、16日ぶりに本郷のBCN編集部に顔を出した。不思議な優越感を味わった。

▼インターネットのお陰で、仕事の情報のやり取りに関しては、米沢と本郷の距離感はまったくなかった。米沢市内であれば、PHSを使ったモバイル環境で、さくさくと情報のやり取りができた。しかし、困ったことが起きた。ホームシックにかかったのである。たった16日間だと高をくくっていたら、10日目ごろになって、どうも独りでいると憂鬱なのである。というか、本郷の編集部の動きが懐かしいのである。今、何が起きているのか。情報の入手はインターネットで十分に、満足できた。しかし、物足りないのだ。インターネットは便利なものだが、その一方で、ライブによる情報交換の味わいを求め始めたのだ。

▼編集部、営業部など、それぞれの場には、「場の情報」がある。例えば、その日のBCN編集部では、だれが焦って原稿を書いているのか、だれがアポイント取りに苦労しているのか、といった類の情報である。こうした雰囲気の情報が伝わってこないのである。言い換えれば、「五感の情報」である。この情報は必要不可欠な情報とはいわないが、ことの重大さを感知する刺激的な力を持っている。そうだ、自動車は「五感の情報」が集約されたものなんだ。(米沢発・笠間 直)
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