北斗七星

北斗七星 2002年9月9日付 Vol.956

2002/09/09 15:38

週刊BCN 2002年09月09日vol.956掲載

 

▼あのいまわしい記憶から早くも1年が過ぎようとしている。天空に向かってそびえ立つ2本の超高層ビルが、脆くも崩れ去った光景は、テレビ映像を通じて見ていたにもかかわらず、余りにも強烈で、やり場のない怒りを心に残した。数多くの人にとって、一生拭い去ることのできない記憶となっているに違いない。朝、いつも通りに家族とあいさつを交わし、職場に出掛けていったビジネスマン、ビジネスウーマンがあのビルにいた。テロとは理不尽極まりない。

▼1998年8月31日、私はカナダから成田に向かう機中にいた。到着が近づき、太平洋上を北海道方面から南下していたのが正午頃だった。ちょうどその頃、北朝鮮から「テポドン」が発射され、日本を飛び越え三陸沖に着弾したと知ったのは、翌9月1日になってからだ。航空機との距離がどの程度あったのか、時間的ズレはどの程度あったのか。今となれば知る由もないが、背筋の凍る思いは残る。もし、命中していたとすれば、何が起こったかも知ることなく、太平洋に散っていたかもしれない。

▼小泉首相が今月17日、北朝鮮の金総書記と会談することが決まった。電撃的な出来事であり、膠着状態が続く国交正常化交渉に打開の糸口が見つかればいいが、早くも「外交はパフォーマンスで解決しない」との批判も出ている。折しも株価は危険水域に足を踏み入れつつある。閉塞感が漂うなか、人気が色あせ始めた小泉首相の「イチかバチかの危険なパフォーマンス」だけは避けてもらいたいものだ。
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