パソコンじたばた日記
<パソコンじたばた日記>第6回
2002/08/05 15:26
週刊BCN 2002年08月05日vol.952掲載
話には聞いていたが、ウイルスってヤツは、こんなに強烈にパソコンをブチ壊すものなのかと、私は慄然となった。これじゃあ、まるでエボラ出血熱みたいだ。なんと恐ろしい話だろう。
駆けつけてくれた救援隊(某出版社のシステム担当者)に課せられた使命は、何よりも原稿のバックアップである。私は、この何年分かの原稿を、すべてハードディスクにぶち込んだままだったのだ。それがすべて露と消えてしまっては、大変なことになる。
「あ、コードレスなんですね、これ」
救援隊員S氏は、私のデスクに向かうと、すぐに言った。そうなの。意外に新しいものなのヨと、ちょっと自慢したかったのに、だが彼は「これ、よくないですよね」と言葉を続けた。
「少なくとも僕は、信じませんね、こういうのって」
「――そ、そうなんですか。そういえば前々から、調子が悪くて」
すぐに卑屈になるタイプの私は、もう、その段階でしょんぼりした。それからは、ただぼんやりとS氏のすることを眺めて過ごした。
しかしパソコンの中身というのは、持ち主の知らないものばかり見事に詰まっているものだ。どういう方法をとったのか、S氏が立ち上げた我がパソコンには、私の知らない画面ばかりが山のように登場する。身内だと思っていた存在の見知らぬ側面を見せられるようなショックである。
「ウイルスじゃ、ないかも知れないですよ、これ」
やがてS氏は難しい顔で呟いた。何かのトラブルが発生して、パソコンが自分で自分を破壊している可能性があるというのである。エボラかと思ったら、アルツハイマーか? 私にはよけいに分からない話だった。
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