旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->10.1970年の旅(2)

2002/07/29 15:27

週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載

(3)ロンドン・パリ・ハンブルグの物価は日本よりも高い。とくに工業品や工芸品は2、3割高いと思った。日本の輸出競争力と日本円の強さを実感した。但し、ローマの物価は幾分安いように思った(この当時は1ドル=360円だった)。

(4)各都市のデパートや商店街を歩いたが、商品はあまり豊富でなく、東京や大阪のもつ熱気を帯びた買物振りに較べて閑散としていた。

(5)欧州各国に共通して大型車が走っていない。クラウン、セドリック級すらも見当たらない。あの大きなドイツ人が、コロナやブルーバード級の車しか使っていないのを見て考えさせられた。

 しかも、各都市とも道路は立派に整備されており、どんな裏通りにも歩道がついている。そればかりか一方通行が徹底しているのにも感心した。人命尊重の思考と公共投資の蓄積ぶりに、教えられるところ大であった。

(6)日本の工業水準の抜群なことを知った反面、農業水準の立遅れを痛感した。

 ドイツのアウトバーンを車で走った時、両側に広々と農園が続いていた。その1つ1つの区画は日本の畑の10倍から20倍の広さで、トラクターの軌跡だけが何本も長く続いていて、人影はなかった。これが本当の大量生産方式なのだと思った。

 日本の農家は関税障壁と農地法に守られて、その生産物が割高だが、過保護が過ぎているように思う。

(7)ロンドン、ハンブルグを見て、日本は欧州を追い越したといささか優越感に浸っていたが、パリを見てからは、日本は今まであまりにも生産力増強に偏り過ぎていたのではないかと考えさせられた。

 国も会社も個人も何のための所得であり物質であるかを、もう一度考えてみる必要がありそうだ。

 この旅行を体験してみて、是非我社の社員にもパリを始めとするヨーロッパ文明の良さを現地で体験させ、その視野を拡めたいと思った(この翌年から年間賞の副賞として社員のヨーロッパ旅行を加えることにした。累計900人に及んでいる)。
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