パソコンじたばた日記
<パソコンじたばた日記>第5回
2002/07/29 15:26
週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載
春、私のパソコンは急死した。 最後に、遺言のように一瞬だけ「Mcfee」の文字を画面に浮かべて、頓死した。
なぜ「Mcfee」なのか。パソコンは私に何を告げたかったのか。などと、推理作家のようなことを言っている場合ではない。私は焦りまくり、慌てまくって、この現実が悪夢ではないかと、何度もスイッチを入れ直してみた。結果は同じ。確か、パソコンを買ったときに山のようについてきたあらゆるマニュアル本の中から「困ったときのQ&A」なども引っ張り出してきて、セーフモードで起動してみたりもした。だが、スキャンディスクをかけてみても、「エラーはありません」というメッセージしか出てこないのだ。
だいたい、私はMS-DOSの頃から嫌だったのだ。実際、パソコンというヤツは勝手に具合が悪くなっておいて、勝手に治ったりしているらしい。自分で勝手に治るのなら、人に言わずにひっそりと、黙って治ればよいものを、悪くなりましたとか何とか、正直に申告する。こちらはその都度、ドキドキするばかりではないか。
今度だって、そんなに急に死ぬくらいなら、「もうすぐ死にます」とか、「具合が悪いです」とか、言ってくれれば良いのだ。なのに、肝心なときには何も言わずに、とっとと死んだ。
「それ、ウイルスかも知れませんね」
たまたま出版社のシステム部の人が電話をくれなかったら、私はその日一日を、丸ごとドブに捨てていた。ウイルスならスキャンディスクには引っかからないというのである。
「で、ノナミさん、バックアップは?」
「――それもセーフモードで、急いでやろうとしてたところです」
結局、その日の夕方、救援隊が外付けのハードディスクを持って駆けつけてくれるまで、私はただオロオロするばかりだった。そして、その日の深夜、我がパソコンは見事に蘇った。ように、見えた。本当は違っていたけれど。
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