旅-経営者の目線-

<旅-経営者の目線->9.1970年の旅(1)

2002/07/15 15:27

週刊BCN 2002年07月15日vol.949掲載

 ヨーロッパには1970年から95年まで前後5回旅行した。その後は時差や年齢による疲労などもあって、もっぱら国内を中心に近場に限ることにしている。

 最初の旅は12日間で、ロンドン・ハンブルグ・ハノーバー・パリ・ローマの各都市を回った。当時はシベリア上空を飛べなかったので直行便がなく、4月25日羽田発、アンカレッジとコペンハーゲンを経由して、白夜のグリーンランドとスカンジナビア半島を越えてようやくロンドンの空港に着いた。この時に今では貴重な日航の北極通過記念証を頂くことができ、私のアルバムを飾っている。

 初めてのヨーロッパは驚きの連続で強い印象を受け、啓蒙されることが多かった。旅の順路を追う前に、まず感想の一部を列記する。

(1)各都市とも、近代的な建物や工場などは郊外に立地させていて、旧市街は古い建物と景観をそのまま工夫しながら使いこなしていた。彼等が先人達の築いた歴史的な文化資産に対して並々ならぬ誇りをもっていることを知って、深く感動した。多くの都市が何百年も前の建物の内部を改装し、今も市庁舎として使っているのに驚いた。また、大都市のなかの公園や広場の大きさ、そして街路樹が立ち並ぶ大通りなど見習うべきものが多かった。

(2)各都市は共通して、古めかしい茶褐色の6、7階建てのビルが同じ高さでずらり道の両側に並んでいる。1階が商店、上の方はアパートで、その内部を改装しながら使っている。職住近接なので通勤も楽であり、裏通りには食料品店などもあって、街全体に生活の息吹が感じられた。その点、東京や大阪の都心は住む人がなく、昼間だけ賑やかで夜は無人の世界になるのとは、全く様相を異にしていた。難点を言えば、日曜はほとんどの商店が休みになるので、旅行者は大変困ってしまう。

 この職住近接の問題は、最近日本でも見直されてきた。遠距離通勤の弊害が注目され、その上バブル崩壊後の地価下落で都心に安価な高層マンションが続々と建設され、住民の都心回帰が進んでいる。その結果、都心に再び活気が戻ってきている。
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