Letters from the World

日本の産業空洞化

2002/07/08 15:37

週刊BCN 2002年07月08日vol.948掲載

 今年に入ってから、香港、上海に日中国境を越えた人材派遣会社が相次いで看板を揚げている。また、4月には東京・虎ノ門に“上海市経営者人材センター”が正式にオープンし、殺到する日本人就職希望者向けに中国現地の事情説明に追われている。

 いずれも経験豊かな日本人管理職と熟練技術者をスカウトし、中国の中堅企業に斡旋するのがその目的である。日本の繁栄に貢献してきた多くの企業マンたちが、長引く不況にさらされ職を失い、これからは中国の産業発展に寄与しようとしている。日本の金、人、技術が中国の巨大市場を追いかけて着実に流れている。

 そんななか、日本企業の中国進出により、国内の産業空洞化が進み大きな社会問題を投げかけている。国の雇用悪化と財政悪化の二重圧力で、政府の政策面にまで影響を及ぼすようになった。失業手当の給付が急増している現状に踏まえ、厚生労働省は6月から早速雇用保険料の引き上げの検討に乗り出したのだ。保険料枯渇が社会保障不安を引き起こす危機感からである。

 日本の産業空洞化は2つの形で現れる。1つは製造業の海外移管によるもの、もう1つは産業再編の結果によるものである。どちにしても競争のメカニズムにより生まれる現象で、もたらす結果は同じである。

 海外から押し寄せて来る競争圧力のなかで、国内企業は合理化を導入せざるを得ない。今後日本は研究開発を通じてハイテク産業を切り開き、技術優位を保つことで国内雇用を確保するしかない。ところが、ハイテク産業は製造業とは違って大量の雇用創出にはつながらない。また、ハイテク、IT分野で日本が今後どこまで技術優位を保てるかにも疑問が残る。

 中国の吸引力が強まるにつれて、日本の空洞化現象も度を増すことになるだろう。前例のないグローバル時代に突入した産業革命のなかで、改革に足踏みする日本がいかに取り組み、空洞化にともなう雇用問題を解決して行くのかが大きな課題となりそうだ。(東京発)
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