北斗七星
北斗七星 2002年6月24日付 Vol.946
2002/06/24 15:38
週刊BCN 2002年06月24日vol.946掲載
▼今から10年ほど前、お忍びで来日した米国の大手パソコン販売店オーナーが、日本で一番印象に残ったものについて、「お蕎麦屋の店員さんが、何十年も同じ仕事を続けていること」と答えた。東京屈指の歴史ある蕎麦屋で、何十年も帳場を取り仕切る店員を見たその米販売店オーナーは、従業員の入れ替わりが激しい自分の店と比べて、「何十年も同じ店で働き続けるなんて…」と驚きを隠せない様子だった。
▼残念ながら、何十年も同じ店で働く店員がいることを同じ販売業の経営者として、「羨ましい」と感じたのか、「間違っている」と感じたのか、問い質さなかった。当時の日本は、終身雇用が当たり前で、米国の小売店オーナーの驚きが理解できなかったからだ。しかし、10年経ち、雇用に対する考え方が全く変わった今の日本では、「何十年も同じ蕎麦屋で働き続けた従業員」に対して、米パソコン販売店オーナーと同じような驚きを感じる人が多いだろう。勤務年数が長くなれば当然給料も嵩むわけで、コストパフォーマンスを考えると是か非か、個人として同じ店で働き続けることが是か非か、色々な角度で考えてしまう。
▼ただ、一顧客としてその蕎麦屋に出向くと、ベテラン店員が帳場に座っていることで、えも言われぬ雰囲気を感じる。他店に比べ値段が高いその蕎麦屋に客足が絶えないのは、味と共にその雰囲気に依るところも大きいだろう。パソコン販売店も米国と同様、人の移り変わりが激しく、店の顔になる従業員がいるところはそう多くない。客もインターネットで価格を調査して店に出向くので、店員とのやりとりを望んでいないとの声も聞くが、果たしてそれでよいのか。店舗と従業員の関わりを考え直す時期ではないだろうか。
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