旅の蜃気楼
<e-Silkroad編 アジアのIT利用技術立国を目指せ>その23 道ができる
2002/06/17 15:38
週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載
▼動物や人の歩いたあとには道ができる。人が歩くと知らぬ間に、地面は固まり、さらに道は太くなる。人は生きるための交易の通路として、道を使う。多くの人が行き来すると、ぽつりぽつりと宿場ができる。いつのまにか定住者が増えて、町ができる。人が増えると、交易の量はさらに増える。人が集まると話に花が咲き、新たに情報が発生する。お酒が入るとさらに盛り上がる。ユーラシア大陸の西と東を結びつけたシルクロードは、こうしてできた。中国にはもうひとつの歴史がある。北方からの侵略を防ぐ万里の長城だ。そこで国防色のベレー帽をかぶった子供と出会った。人の歴史は戦の繰り返しである。今は文明の中心が移動して、歴史の彼方にたたずんでいる。現代になって、インターネットがシルクロードの道になろうとしている。
▼コラム「旅の蜃気楼」で、「e-Silkroad編」を始めて6か月になる。書くきっかけは「NY911」との遭遇である。その時、WTCの崩落をまじかに見て、「人の儚さ」を感じた。「人の思い」のエネルギーは何をしでかすかわからない。なぜ、こんなに大それたことができるのだろうか。いまもって、理解できない。歴史書の多くはそれを伝えている。が、それを人は繰り返している。なんて、人は儚い存在なんだろうと考え始めて、まとまらないまま思考は今も成り行き任せである。「NY911」の情報活動はインターネットの情報インフラの上で起こった。マスコミの報道も、一般住民の情報発信もインターネット上で瞬時に展開された。ライブカメラで、今のマンハッタン島を見ることができる。世界のどこにいても、インターネット上で誰もが見ることができる。本当だろうか。
▼世界中から本当に、インターネットで見ることができるのだろうか。体感せずにはおられない。行ってみることにした。ニューヨーク、ワシントンDC、トロント、札幌、シンガポール、インド・バンガロール、名古屋、上海、ベトナム・ホーチミン、大阪、台北、金沢、ニューヨーク、ソウル、熊野、モロッコ・タンジール、広島の街で、インターネットを使った。どこからでもインターネットで世界が見えた。そして今回、「e-Silkroad編」の旅を次号でひとまず終えるにあたって、シルクロードの国、中国の首都・北京を訪ねた。毛沢東は変わらぬまなざしで人々を見つめていた。天安門を右手に見ながら、バスは新世紀飯店(ANAホテル)に向けて走った。さっそくパソコンのセットアップ作業に入った。筆者の習熟度を棚に上げるのもなんだが、環境が整備されていない。フロントに問い合わせた。ホテル専用の電話番号「095700」を入力した。つながった。さくさくと、世界につながった。「シェーシェ」。国の境は何もない。インターネットの道で世界は同心円上につながった。(旅の蜃気楼 北京発・BCN主幹奥田喜久男)
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