Letters from the World
ナップスターの終焉
2002/06/17 15:37
週刊BCN 2002年06月17日vol.945掲載
ご存じの通り音楽業界は違法コピーとの戦いに躍起である。そのなかでも仇敵とも言えるPtoPファイル交換のナップスターが買収されたことで、この業界はますます大手主導になるであろう。音楽業界は意外な程保守的であり、アウトローを極度に嫌うことはインディーズなどが大手に対抗することから始まったことでも分かる。その為本来IT産業とは良好な関係を築けるはずだったのだが、市場占有を目指しナップスターやCDNOWなどの配信サイトや販売網を次々と傘下に納めてきた。
しかしその選択のいずれでも消費者の利益は無視されている。そして違法コピーには力ずくで対抗しているが、ナップスター同様のPtoPファイル交換システムが氾濫している現状ではその場しのぎでしかないのは言うまでもない。
ところが同じく違法コピーの氾濫に頭を悩ませるもう一つの雄である映画産業界は全く違う形での解決方法を見いだしたようだ。既に閉鎖されたMovie88.comなどの配信サイトだけではなく、ニューヨークの街角では公開初日の夕刻にはコピービデオが並べられている。しかし大衆はやはり大きなスクリーンで楽しみたいと思うのか、興行収入の記録更新は近年珍しくもない。多少の支払いが発生しても映画館で見たいと思わせる質の高い作品を市場に提供することで、逆に違法コピーも作品の宣伝に利用できているのだ。映画産業は正攻法で良い結果を手に入れたのである。
音楽産業がこの先も大手の独善のみで進むならば違法コピーとのイタチゴッコは終わることはない。まずはダウンロードしたMP3ファイルでは物足りないと思うような質の高い作品の市場への提供こそが最初の一歩ではないだろうか。
(米ニューヨーク発)
- 1