Letters from the World

値上げ

2002/04/15 15:37

週刊BCN 2002年04月15日vol.937掲載

 最近ITメーカー2社が相次いで値上げを発表した。ひとつはもちろんご存じアップルのiMac、もうひとつはハンドスプリングのPDA、テリオである。不景気が叫ばれてから久しく、米国経済もまだまだ低迷と言わざるを得ないこの時期に、なんとも強気なことではある。

 ところで筆者はパソコンやPDAをかなり早い時期から積極的に活用してきた。しかしいまだに最初に買ったマッキントッシュが、今まで購入してきたなかで最も高価なパソコンであり、それは私が新品のiMacを購入したとしても変わらない。

 しかしPDAに関しては、最初に手にした日本製電子手帳から、購入の度にその価格は上がり続けており、今後しばらくは記録は更新されていくに違いない。実際にiMacは市場の反応も概ね好評であり、値上げをものともせず好調な販売実績を残しつつあるが、テリオはPDA市場全体が頭打ちであり、各社とも明確な打開策を打ち出せずに苦戦している。

 この2社の一見似たような値上げの意味合いは、実は大きく違う。アップルは製品発表後も十分な流通もないままさんざん待たされ、購買意欲が頂点に達したときの値上げである。アップルは「攻め」の戦略だ。市場も十分成熟している。

 テリオの値上げにはいろいろ注釈が付いており、契約内容などで旧価格での入手も可能だ。若干の弱気を感じさせると共に、その価格はライバル社も含めた製品群のなかでも最も上位に属し、600ドルに達しようかというのであるからなおのこと明るい希望は持てそうにない。しかも市場はまだ混迷をきわめている。

 双方ともあらゆる事を踏まえた上での決断であろうが、結果に関しては「同様に」と言うわけにはいかないだろう。iMacはこれまでの低価格化への歯止めとなる可能性を秘めているが、テリオは販売不振のまま消え去ると筆者は予想している。さて結果はどう出るのであろうか。(米ニューヨーク発)
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