北斗七星

北斗七星 2002年3月11日付 Vol.932

2002/03/11 15:38

▼「成績は70点」。日本IBMの大歳卓麻社長は、2001年度(1-12月)の決算を振り返り、こう自己採点した。総売上高、国内売上高ともに過去最高を記録。利益は前年度を若干下回ったものの、それでも当期利益で1000億円を超える額を確保した。だが、前年の採点「75点」には及ばなかった。「減益、そして売り上げの伸びが2ケタに届かなかった」ことが減点要因という。IT不況に苦しむ国内電機大手からすれば、皮肉とも受け取れるほどの控えめな採点だ。

▼アウトソーシングサービスの売上高が前年度比60%増もの伸びを示し、eビジネス関連も同30%増で推移。サービス関連が同社のビジネスの柱であることを改めて印象づけた。90年代、ハードからソフト・サービスへと大きく舵を切ったIBMの戦略がいま正に花開いている。にもかかわらず、大歳社長は「今年はハードの売り上げをもっと伸ばしたいのも正直な気持ち」と発言。収益改善に向け、ようやくソフト・サービスへ方向転換を始めた国内大手を尻目に、余裕すら感じられる。

▼そろそろ日本企業にとって社長人事のシーズンだ。先週には早くも三菱電機が交代を発表。谷口一郎社長の後任として、野間口有専務が4月1日付で昇格することとなった。「現社長の路線を継承したい」。日本企業の交代会見では、よくこの言葉が次期社長の口から出てくる。隣に現社長が控えている以上、当たり障りのない表現になるのだろう。三菱電機の野間口次期社長からも同じような表現が聞かれた。しかし高度成長期ならともかく、昨今のような混沌とした時代には思い切った戦略転換も重要だ。「前社長の路線にこだわらず、新たな収益の柱を見出したい」。そんな気概に満ちた新社長の抱負を一度聞いてみたいものだ。
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