旅の蜃気楼
<e-Silkroad編 アジアのIT利用技術立国を目指せ>その11 トイレとPCの明暗
2002/02/18 15:38
▼さて、インドに話を転じる。バンガロールのIT業界は98年から展示会「IT.COM」を開催している。第4回の開催は01年11月1-5日であった。270社が参加。出展企業のうち、90%がソフト会社だ。日本とは逆転現象だ。会場内はソフトばかり。プレスルームでは参加企業のブリーフィングや、政府役人の記者会見を実施している。その光景は日本よりも、米国のコムデックス(COMDEX)にそっくり。バンガロールは、インドを代表するIT産業特別地区。会見に参加する記者の数は100人を優に超えていた(写真上)。今の日本でこれだけのマスコミを惹きつけるIT関連のショーはあるだろうか。インドのIT業界は元気なのだ。NY911以降の需要減を心配していたが、IT産業以外に期待できる産業はない。だからインターネットに期待する、というわけだ。
▼日本との人口比は1対9だから、すべてに人の多さが目につく。「IT.COM」の一般公開日には学生と家族がどっと押し寄せて、人のエネルギーに圧倒されてしまう。トイレに行くと、一応水洗だが、よほど“せっぱ詰まった事態”にならない限り、使う気にはなれない。実際に使用してみた。便座に座るのに勇気が必要だった。水がちょろちょろで、後の人に気兼ねしてしまう。トイレ報告はこの辺りにしよう。いそいそとブースに戻る。するとそこはウィンドウズの世界だ。画面の向こうにはインターネットの世界が時空を超えて広がっている。GDPの低いインドの人たちにとって、パソコンはまさに海外旅行なのである。トイレとインターネット。この明暗がなんともインド的といったら、それは象の脚といわれそうだが…。
▼これまでの連載で、ギリさんと、原真さんが登場した。もう1人、重要な人物がいる。IT業界の日本人のなかで、この人はインド・ビジネス通の3本指に入るのではないか。日印ソフトウェアの会長を兼務するエヌ・ディ・アール社長の永原隆嗣さんだ。1月30日、この3人(写真下=中央が永原氏)が本郷のBCN編集部を訪ねた。「日本の人たちには、もっとグローバル感覚をもって欲しい」。ギリさんは熱く日本人への期待を語った。(旅の蜃気楼 札幌発・BCN主幹奥田喜久男)
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