北斗七星

北斗七星 2002年1月14日付 Vol.924

2002/01/14 15:38

週刊BCN 2002年01月14日vol.924掲載

▼ワークシェアリング─仕事の分かち合い。今、産業界ではこのテーマについての議論や研究が活発になっている。不況時の雇用を維持するための策として考えられているもので、簡単に言えば、労働時間を短縮することで仕事を分かち合い、雇用を確保するというもの。労働時間の短縮による人件費の抑制と、雇用の確保による失業者の増大をふせぐことができるとあって、企業側と労働側双方にメリットがあるとされている。厚生労働省は、すでに昨年4月の段階で「ワークシェアリングに関する調査研究報告書」を発表している。労働側も昨年11月に行われた連合の春闘中央討論集会で「やむをえない状況」(笹森清会長)と、官・民ともにその導入に向けて動いている。

▼ワークシェアリングのモデルでよく紹介されるのは、オランダの事例だ。10%という高い失業率に悩まされていた1980年代初頭のオランダが、ワークシェアリングを導入した結果、雇用が維持され、失業率が低下したという。年末年始のマスコミの論調は、総じて「今年の経済状況も昨年同様厳しい」というものばかり。雇用の面では、もはやワークシェアリングの導入は必須だろう。

▼富士通がワークシェアリング制度の導入を検討しているとの報道もある。半導体工場の従業員を対象に、今春の実施を目指す方向で検討が始まるという。もっとも、富士通の場合は「緊急避難型」のワークシェアリングだ。先に紹介したオランダの事例は「雇用創出型」。同じワークシェアリングでも性質が異なる。今後、この制度を導入する企業が増えるだろう。現下の不況をまず乗り切ることが重要なのは確かだが、一時的避難ではなく、未来につながるビジョンをもったワークシェアリングが必要だ。
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